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2017.03.14更新

 平成28年12月19日最高裁判所は、相続預金に関し判例の変更をした。今までの判例は、預金については遺産分割の対象ではなく相続人がその相続分にしたがって当然に権利を承継するという立場ででした。(最判S29.4.8)例えば以前ですと、仮に被相続人の預金が300万円あり相続人(子)がABCと3人いたとします。判例変更前であれば、Aは理論上当然に銀行から100万円おろすことができました。最も銀行は、相続トラブルに巻き込まれることを嫌がり遺言書がある場合を除き、遺産分割協議書(全員実印押印・印鑑証明書添付)又は銀行所定の相続人全員の同意書をもって行かないと解約に応じてくれませんでしたが・・・

 そういう意味では、銀行の実務に判例が追い付いたということが言えるかもしれません。またもし従前の判例の通りなら、上記ABC3人の中の一人が、生前に贈与を受け特別受益者となっていても100万円もらえてしまうという相続人間で実質的な不公平が生じてしまうかもしれませんね。裁判所や新聞社、あるいは弁護士のHPに出ているので、詳細は省きますが「預金も遺産分割の対象になる」ということを紹介するために記載しました。

 

 一方金融機関側もこの判例によって、別の問題も生じているようです。

 例えば上記300万円の相続の事例で、相続人Aが銀行から100万円借りているとします。返済期日になってもAは返済してくれないので、銀行はこの300万円のうち100万円を相殺することができるか?

 従前であれば、100万円は当然にAのものなので、躊躇なく相殺ができました。しかし遺産分割の対象になったことで、相殺の可否について金融機関側も対応がバラバラのようですね。更にAの債権者Xが100万円の貸金返還請求訴訟に勝訴し、300万円のうち100万円を差し押さえたとした場合、従来は当然に金融機関は差押えに応じてくれましたが、現在は金融機関も対応がバラバラなようです。

 これは個人的な考えですが、債権者Xが100万円を差し押さえる場合認められるのかなと思います。というのは、不動産の場合、Xは債権者代位権を行使し、法定相続による登記をし、Aの持分を差し押さえることができるからです。現実に持分の差押えをして競売にかけることがあるのか不明ですが、不動産はできて預金はできないというのは不思議ではありませんか?

投稿者: NBC司法書士事務所