ブログ

2017.11.29更新

 前回は、遺言書により争族に巻き込まれたAさんの事例をご紹介しました。

 Aさんの事例では、Aさんの亡夫が家族のために自筆証書遺言を残していました。

 自筆証書遺言とは、いくつかある遺言の一種であり、公正証書遺言と並んで一般的に利用される遺言書の形式です。

 遺言は遺言者の意思を死後に実現するものであるため、法律で定められた厳格な形式を備えていなければなりません。

 自筆証書遺言はその名称通り、全文、日付、氏名、全てが自筆で作成され、捺印が必要となります。

 一見すると、作成するには非常に簡単だとおもわれることでしょう。確かに、ペンと紙があればいつでもどこでも手軽に書くことが可能です。しかし、自分の死後、遺言通りにその内容が実現されるかどうかは別の問題が生じます。

 Aさんの事例では、全文、日付、氏名すべて自筆で作成されており、Aさんの印鑑も捺印されていたため、形式上遺言の体裁は整っていました。しかし、肝心の遺言の内容が、遺言者の意思を実現するための具体性に欠けており、登記手続上、使用することができなかったのです。もちろん遺言者の家族を思う意思は十二分に伝わります。

 しかし、それが手続きに使用できるものでなければ、Aさんのように思わぬトラブルを招くことになってしまいます。

Aさんの事例の遺言書は、遺言者が独自に書いたものであったためこのような事態を招いたのだと思われます。

 また、全文、日付、氏名についてそれぞれ、一定の決められた書き方が判例上、確立しており、それらをすべて抑えた上作成する必要があるため、細心の注意を払いながら作成する必要があります。
 次回は自筆証書遺言とならんで、作成することの多い、公正証書遺言について解説致します。

投稿者: NBC司法書士事務所