遺言・相続

遺言書作成について

遺言は好きなときに作成できますが、法的拘束力を持つため、厳格な要件が定められています。これを満たさないと無効になる可能性があるほか、家庭裁判所の検認手続きが必要であったり、自己に不利な相続人が処分してしまったりと、さまざまな問題点を抱えているのです。

そこで当事務所では、公証人が作成する「公正証書遺言」をお勧めします。専門家なら要件を知っていますし、検認手続きは不要、保管も行ってくれます。また、当職に遺言執行業務をご用命いただければ、遺志が確実に実行されるようサポートいたします。

遺言書が必用なケース 

相続人が配偶者とあなたのご兄弟姉妹しかいない

夫婦に子どもとご両親がいない場合、遺産の3/4を配偶者が譲り受け、残りの1/4はご兄弟姉妹で等分します。このとき、ご兄弟姉妹が複数人いると、配偶者が得る遺産額との間に倍以上の開きが生じ、もめ事の引き金になりかねません。法律通りにするのか、何か工夫や配慮を施すのか、遺言書で一言添えるのはいかがでしょうか。

相続人が海外で生活している場合

通常の相続では、「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員から署名・なつ印をしてもらう必要があります。(印鑑は、実印なので印鑑証明書が必要になります。)しかし、そのうちの1人でも海外に住んでいるとしたら、殆どの国では印鑑証明書の制度がないのでサイン証明書等取得することになります。その方が大使館又は領事館の近くにお住まいであればともかく、そうでなければかなり負担を強いられることが予想されます。そのため面倒になってなかなかやってくれないということも起こりかねません。もし遺言があれば、「遺産分割協議書」のプロセスを省略することができます。

相続人以外の方へ遺産をのこしたい場合

献身的に尽くしてくれた子供のお嫁さん、事業のパートナー、いとこや遠縁の親戚などは、相続する権利を持っていません。何かしらのお礼を考えているなら、必ず遺言書が必要です。また、相続人がいない場合、遺産は最終的に全額国庫へ寄付されてしまいますので、これを防ぐことにも利用できます。

相続人の一部に行方不明者がいる場合

相続人の一部に行方不明者がいる場合、遺産分割協議をしようとすれば不在者財産管理人を選任する必要があります。しかし選任しただけでは不在者財産管理人は、遺産分割協議をすることはできず、家庭裁判所に遺産分割協議案を提出して不在者財産管理人の「権限外の申立」をし裁判所に認めてもらう必要があります。状況にもよりますが、不在者財産管理人を選任してから権限外の申立てが認められるまで、最低でも半年はかかります。更に原則として不在者である相続人に法定相続分を確保するような案でなければ裁判所が認めてくれません。もし遺言があれば、遺産分割協議をするために不在者財産管理人を選任することから解放されます。なお生死不明の状態が7年を経過していることが証明できる場合、失踪宣告の申立ても考えられます。

ご自身が再婚しており前妻(夫)と後妻(夫)との間にそれぞれ子供がいる場合

この場合特に後妻(夫)の子側が相続手続きを進めていくケースが多く戸籍を調べたら前妻(夫)の子がいたといって驚くことがあります。
一般的にそれぞれ付き合いがないので、後妻(夫)の子はどのように前妻(夫)の子に伝えるべきか、逆に前妻(夫)の子は、後妻(夫)の子が相続財産を隠さず自分に知らせているのか不安に思います。ご本人からみればいずれも可愛い子供でしょうが、子供たちからみれば赤の他人です。したがって遺産分割協議が困難になることはよくあります。

※法定相続人に認められた、最低限の遺産を譲り受けることができる遺留分という権利があります。本来受け取る額の2分の1(相続人が直系の親しかいない場合は3分の1)までを主張できます。遺言書より強い効力を持ちますので、遺産の分割を決める際には十分に注意してください。

遺言書作成の適齢期

特にありません。作成しようと思ったときが適齢期です。ここから先は私見になりますが、60歳から65歳くらいの間に一度作成するのがベストだと思います。70歳を過ぎると、人によっては判断能力が低下し、他人に言い含められて遺言書を作成するというケースが散見されるからです。
あるいは、マイホームを購入したタイミングでもいいでしょう。ローンをどの金融機関で組んだのか、自宅を誰に相続させたいのかなどを、ご親戚がわかるように書き記しておいてはいかがですか。遺言書はいつでも書き改められますので、重要事項のメモ代わりとして、ぜひ活用してみてください。

トラブル回避の為に

遺言書は必ず自分の意思で作成してください。他人の勧めに乗ると、少なからず自分に有利な内容を盛り込もうとしますから、後でトラブルが起きやすいのです。また、不利益を被った側が遺言書を無効にしようとするあまり、あなたのことを判断能力のない認知症扱いにするかもしれません。不愉快な思いをしないためにも、十分に注意しましょう。

相続登記について

相続によって不動産を取得した際には、「相続登記」という手続きが必要です。いつまでにしなければならないという期限や義務はありませんが、後々、受け継いだ不動産を売却したり、担保にして融資を受けたりする場合に備え、自分の所有物であることを記録しておきましょう。
仮に「相続登記」を放置すると、どうなるのでしょうか。何代にもわたって相続登記がされていない場合、当事者を探すのが困難なケースが多く、当事者が大勢いて話がまとまらないということがよくあります。結局権利者不明の土地だけが残されてしまうでしょう。

相続の流れ 

相続の開始(被相続人の死亡)関係者への連絡や葬儀の準備を進めます
7日以内 通夜・葬儀の準備 死亡届に死亡診断書を添付して市区町村長に提出します。
初七日法要  
3カ月以内 遺言書の有無の確認 自筆証書遺言書があった場合は、家庭裁判所で検認を受けた後、開封します。
香典返し 四十九日忌法要のころに行われます。
相続人の確認 被相続人と相続人の本籍地から戸籍謄本を取り寄せます。
遺産や債務の把握 借金や連帯保証人の有無に気をつけます。
相続放棄または限定承認 負債が多い場合は、相続の開始から3カ月以内に家庭裁判所へ申述します。
4カ月以内 準確定申告 被相続人の死亡した日までの所得を税務署に申告します。
10カ月以内 遺産や債務の調査 チェックシートなどを作成し、現物と照らし合わせます。
遺産評価・鑑定  
遺産分割協議書の作成 相続人全員の実印と印鑑証明書が必要となります。
相続税の申告書の作成 納税資金を準備し、延納または物納を検討します。
相続税の申告と納税 被相続人が死亡した時の住所地を管轄する税務署に、申告・納税します。延納、物納の申請もこのタイミングで行います。
1年以内 遺産の名義変更手続き 不動産の相続登記や預貯金、有価証券の名義変更をします。

相続放棄について

相続放棄とは、プラスの遺産のみならず、借金なども含めた全ての相続をしないことです。「相続放棄の申述書」という書面を作成し、相続の開始から3カ月以内に家庭裁判所へ提出します。相続を放棄する理由としては、次の事項が考えられます。

1 債務が超過している
相続人間で生じた紛争に巻き込まれたくない
被相続人から生前に相当の贈与を受けている
生活が安定し、遺産を必要としない
遺産を分割させたくない

詳しくは当事務所監修の「相続専門サイト」をご覧ください。

http://www.nishitokyo-souzoku.com/

民事信託について

自由契約によって、自分の財産を信頼できる人に託する制度です。成年後見制度と異なり、認知症を発症する前から利用できます。また契約内容によっては、本人の死亡によって契約が終了することもありません。契約内容も自由なので、任せる財産の範囲や委任するタイミングも指定可能。相手の了承が前提になるものの、応用範囲の広い方法といえるのではないでしょうか。